Symantec社のNorton GoBack ここがダメ

まず Norton GoBack を知らない人のためにどういうものかを説明すると

Windows が起動しないというトラブルや、重要ファイルの上書き、動作不良、ウィルス感染によるデータの消失などで取り返しのつかない状況に陥ったときに、システムを正常だった時点にまで戻したり、消失したファイルを簡単に復元できるデータリカバリーソフトだ。
インストール直後から自動バックアップを開始し、常時 HDD 内のファイルを監視する。トラブルが発生したら、リストを使って任意の時点にまでシステムを簡単に戻すことができる。戻し方も、ディスク全体を一気に戻すやり方と、過去の HDD の内容を参照しながらファイル単位で復帰させる方法が有るらしい。(くろねこはいつも全部戻してました。)PCが起動しないという場合でも、起動ディスクに自動で作成された「GoBack ドライブ」にアクセスしてデータを復旧できるというのがうたい文句だ。(こんな時、くろねこはいつも Ghost でした。)
ふつうのバックアップソフトである Norton Ghost や Symantec System Recovery とはまた違う特徴を持っていて、互いに足りない部分を保管するように作ってある。

しかし、GoBack 仕様上の大きな問題点がいくつかある。このことを考えて使用を決めないと、トラブル時に痛い目に遭う。
大きく問題点をまとめると
1. HDDのアクセススピードが遅くなる
2. HDDの寿命が短くなる
3. HDD全体を1つのパーティションとして独自の方法で管理する

問題点(1),(2)については普通に誰でもわかる(説明されれば理解できる)ことなのだが、GoBack は基本的にいつでも元に戻せるように HDD の片隅の自分専用領域に元に戻すべき変更情報を書き込んでいる。ということは書き込むべき情報を元のデータと新しいデータで計算して複製して2カ所に書き込んでいるので、遅くなって当然。また、単純に考えて書き込む量が増えたので消耗品である HDD の耐久性も減るので寿命は必ず短くなる。どうやってもさけられない問題点だ。
また、この問題について遅くなることは自体は所々にふれてあるが、くろねこが知る限り Symantec はどの程度遅くなるとか寿命が短くなるとかふれていない。

問題点(3)について GoBackではすでに述べたように、 HDD を1つのパーティションとして管理している。では、以前にあったパーティションはどうなるのか?それは GoBack が仮想パーティションを以前と同じパーティション構成で提供している。
GoBack の MBR(マスターブートレコード)を介して起動すると、仮想ドライブが見えるため、いつもどおりで見た目には何も変わらない。通常の状態ではこのようにふつうに見えるようになっている。しかし、他のPCに接続して確認すると、不明なパーティションになっていることがわかる。
このことが、基本的仕様の間違いでトラブル対策ツールとしては致命的欠陥となっている。
まず、HDD が壊れた場合、他の PC に接続し壊れていない部分のデータを、取り出そうと思っても取り出すことが出来ない。
次に、通常論理的に破損した場合には、壊れたパーティションのみが問題となるケースがほとんどだが GoBack を導入していると被害の範囲はドライブ全体が対象となる。
顕著な例で言うと、ただ MBR が破損しただけの場合(※1)、GoBack 未使用時には FIXMBR(2000, XP で使用可能な修復ツール)で MBR だけ修復することになり(※2)、だいたい10分程度の修復時間となる。
しかし、GoBack 導入時には、FDISK(9x系の HDD ユーティリティ)などで MBR を修復後、HDD 全体を Ghost などのバックアップツールから戻すことを Symantec から求められる。この方法だと、バックアップ以降のデータを取り出すことは出来ない。
この問題を回避するために自分自身は他の HDD に OS と GoBack をいったんインストールし、GoBack の MBR を使い起動する環境を作成しその環境からデータを取り出すことで回避した。しかしこの環境から GoBack をアンインストールするのに必要だった時間は8時間ほど(0.8TB時)。これはHDDの容量によっても変わる。

以前、他のツールで同様の問題が有った。それはかつて Microsoft 社が提供していた DoubleSpace などのディスクダブラーと呼ばれるたぐいのユーティリティ。このユーティリティも複数のファイルを一つのファイルにまとめ、独自ユーティリティで仮想ファイルシステムを提供していた。このため、この管理ファイルが壊れると壊れていない部分に格納されていたファイルも取り出せ無くなる。このため上位 OS である NTは(2000,XPも)、NTFS というファイルシステム自体に圧縮機能を詰め込み、ファイル単位で管理することで1このファイルのトラブルが複数のファイルに影響を与えるのを防いだ。

Symantec 社には(3)の問題点について伝えたが、当分改善する気は無いらしい。

購入を考えている人はこのことをよく理解した上で、購入してほしい。
ちなみに、くろねこはもう使用をやめました。

※1 ブートセクタが破損
MBRには、ブートセクタを呼び出すマスターブートコードやパーティションテーブルなど、重要なプログラム/データが記録されている。特に複数のOSを共存させる場合はMBRを書き換える機会が増えるが、設定が不適切だったりすると既存のOSが起動できなくなってしまうこともある。また、何らかのトラブルでMBRが破損すると、ハードディスクからOSを起動することができなくなってしまう。

※2 FIXMBRを使うべき状況

追記
GoBack が1つのパーティションで管理していて、仮想パーティションを提供していると書いた。
他のPCから見たときには、実際そのように見える。しかし、完全に独自の方法で管理するとアンインストール時などかなり面倒なので、中身は通常のドライブとほとんど変わらないのかもしれない。
アンインストール時にはかなりの時間がかかるので、もしかすると本当に独自の方法で管理しているのかもしれないが...

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